富岡鉄斎(1836-1924)展が、出光美術館で8月3日まで開催中です。

http://www.idemitsu.co.jp/museum/honkan/exhibition/present/index.html

鉄斎の絵を初めて見たのは、テレビで見た富士山図屏風。
http://www.asahi.com/kokka/masterpiece/6.html#1

「これが富士山?」(「全体像を見る」の、左側の富士山頂上をアップで描いた図)と、ものすごい衝撃を受け、感動したのを覚えています。
今まで見たこともない幻想的かつ不思議な迫力のある絵にすっかり魅了され、いつか兵庫県の鉄斎美術館に行ってみたいとずっと思っていたので、このたび出光美術館で没後90年展を開催すると聞いた時は思わず小躍り。

鉄斎は幕末・明治・大正を生きた文人画の巨匠で、理想郷を描いた書画を多く残しています。

鉄斎独特の書と絵の世界に引き込まれます。
鉄斎2

彼の描くユートピアには、「見たことのない岩山」、「滝などの水」、「自分が住むことのできる庵」が、そして手前には、こちら側と向う側の世界を隔てる印となっている、「水辺や舟とそれにかかるアーチ型の門」が描かれているとのことです。

こちらは鉄斎最晩年、88歳の作品「蓬莱仙境図」。思うままに筆が流れ、抽象画を見ているような感じです。摩訶不思議なエネルギーに包み込まれそうになります。
鉄斎3

鉄斎、理想郷の書画の他にも、ユーモアや人間味に溢れた作品を数多く残しています。人間や動物の表情がとにかく魅力たっぷりで可愛いです。

鉄斎5

鉄斎8


鉄斎4

どれも思わず笑顔がこぼれるすてきな作品なのですが、今回特に立ち去りがたかった作品は、大きな屏風に描かれた「放牛桃林図」。

鉄斎7


鉄斎6

山と、桃の木と牛が描かれた大きな屏風が二つ、L字型に展示されています。遠くの山の景色が右側に、中央に行くに従って近くの景色が描かれているので、屏風手前からゆっくりL字型に沿って歩いて行くと、遠くの景色から理想郷の世界にあたかも自分が入り込むかのような、粋な工夫が展示に活かされています。

牛の表情がなんとも可愛いです。
鉄斎8

鉄斎9

展示の作品は全て出光美術館の所蔵ですが、同美術館で鉄斎展が前回開催されたのは10年前。今後もいつまた開催されるかは未定とのことでした。すばらしい作品ばかりなので常設展でも見られたらよいのですが、今のところその予定はないそうです。

あと1週間ちょっとの展示期間となってしまいましたが、ご興味ある方は、鉄斎の世界にどっぶりと浸れるすばらしい展覧会なのでぜひ行かれてみてはいかがでしょう。