4月6日まで、世田谷美術館で『岸田吟香・劉生・麗子~知らざれる精神の系譜』という企画展が開催中です。
日本絵画史上最も興味深い画家として知られる岸田劉生、福沢諭吉と並び当時の文化人として著名だった父吟香、演劇人・画家であった娘麗子、明治・大正・昭和にわたる親子三代の作品や貴重な歴史的資料330点が展示されています。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html
岸田劉生は麗子像があまりに有名ですが、今まで実物を見たことがなかったので、この展覧会のことを聞いたときはぜひ行ってみたいと思っていました。
春らしくぽかぽか陽気の休日、世田谷美術館へ出かけてきました。
世田谷美術館は、様々なワークショップや学校との連携プログラム、イベントなどを通じ、地域に根付いた芸術教育にとても力を入れている美術館です。以前ミュージアムエデュケーションの講義を受けた時、講師の先生が、日本ではまだ数少ないそういった教育活動を積極的に行っている、国内でも最も優れた美術館の一つとして名前を挙げていらっしゃいました。
最寄駅は田園都市線の用賀駅です。
駅からは少し距離がありますが、天気のいい日にのんびりぷらぷらとお散歩しながら行くのも楽しいです。
駅から美術館の途中にある、ウエディングスペースとしても利用できるすてきなお花屋さん。
店内はアンティーク家具とお花で空間を演出してあり、とてもお洒落です。
コーヒーとケーキを出すカフェも入っているので、こちらで寄り道するのもよさそうです。
遊歩道をしばらく歩くと、砧公園へ到着。美術館は公園の中にあります。
今はちょうど梅がきれいな時期で、この日も木の下でピクニックを楽しむ人たちがたくさんいました。
世田谷美術館には150名収容のホールが併設されていて、この日は学芸員の方による、展示会についての無料講演会が行われました。今回の企画展は3名の学芸員の方が担当され、約3年かけて準備をされたそうです。「最後の数か月は土日も眠る暇がないほど大変でした。全国60か所から作品や資料を集めましたが、特に劉生の作品はそれぞれの所蔵美術館がお宝にしているのでなかなか貸してくれず、交渉もとても大変でした。本当に大変でしたが、その甲斐あって、ひじょうに内容の濃いすばらしい企画展になっています」とおっしゃっていました。
その言葉通り、実に見応えのある、すばらしい企画展でした。
3部構成になっていて、1部では「幕末・維新の先覚者、岸田吟香」として、ヘボンと一緒に編纂した和英・英和辞書や、自身が起業して大成功させた液体目薬の宣伝広告、彼が庇護した画家たちの作品などが展示されていて、歴史的にもとても興味深い内容です。
ちなみに私が訪れた時は辞書の「M」のページが開かれて展示されていましたが、「マメ=a young maid in a prostitute home」や、「マメダツ=to be truthful, sincere, faithful」など、むしろ日本語の意味が分からず、1886年に使っていた日本語を知るのも面白かったです。
2部は劉生の代表作である麗子像の油彩連作を始め、様々な作品が展示されています。
有名な麗子像。本物はやっぱりすごかったです。
ただただ絵に引き込まれ、しばし動けなくなりました。
木炭、チョークで描かれた彼の妻、蓁のスケッチ。
なんとも魅力的で美しく、心に深く迫るものがありました。
東洋の美に魅せられた劉生は、日本画も多く残しています。
こんなユーモアたっぷりの絵もあります。タイトルは「料理のない時をる化けもの」。
挿絵も多く手掛けています。こちらは武者小路実篤『かちかち山と花咲爺』の挿絵。
学芸員の方のコメントに「ウィリアム・ブレイクばりの世界を背景としつつ、興味深い独創性を見せている」とありますが、一連の作品はどれもかなり面白かったです。
3部は、演劇、絵画、小説などを通じ、表現者として生きた麗子像のモデル、岸田麗子の活動が紹介されています。
とてもすばらしい企画展なので、世田谷近くにお越しになる機会があったら足を運ばれてみてはいかがでしょう?
日本絵画史上最も興味深い画家として知られる岸田劉生、福沢諭吉と並び当時の文化人として著名だった父吟香、演劇人・画家であった娘麗子、明治・大正・昭和にわたる親子三代の作品や貴重な歴史的資料330点が展示されています。
http://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/exhibition.html
岸田劉生は麗子像があまりに有名ですが、今まで実物を見たことがなかったので、この展覧会のことを聞いたときはぜひ行ってみたいと思っていました。
春らしくぽかぽか陽気の休日、世田谷美術館へ出かけてきました。
世田谷美術館は、様々なワークショップや学校との連携プログラム、イベントなどを通じ、地域に根付いた芸術教育にとても力を入れている美術館です。以前ミュージアムエデュケーションの講義を受けた時、講師の先生が、日本ではまだ数少ないそういった教育活動を積極的に行っている、国内でも最も優れた美術館の一つとして名前を挙げていらっしゃいました。
最寄駅は田園都市線の用賀駅です。
駅からは少し距離がありますが、天気のいい日にのんびりぷらぷらとお散歩しながら行くのも楽しいです。
駅から美術館の途中にある、ウエディングスペースとしても利用できるすてきなお花屋さん。
店内はアンティーク家具とお花で空間を演出してあり、とてもお洒落です。
コーヒーとケーキを出すカフェも入っているので、こちらで寄り道するのもよさそうです。
遊歩道をしばらく歩くと、砧公園へ到着。美術館は公園の中にあります。
今はちょうど梅がきれいな時期で、この日も木の下でピクニックを楽しむ人たちがたくさんいました。
世田谷美術館には150名収容のホールが併設されていて、この日は学芸員の方による、展示会についての無料講演会が行われました。今回の企画展は3名の学芸員の方が担当され、約3年かけて準備をされたそうです。「最後の数か月は土日も眠る暇がないほど大変でした。全国60か所から作品や資料を集めましたが、特に劉生の作品はそれぞれの所蔵美術館がお宝にしているのでなかなか貸してくれず、交渉もとても大変でした。本当に大変でしたが、その甲斐あって、ひじょうに内容の濃いすばらしい企画展になっています」とおっしゃっていました。
その言葉通り、実に見応えのある、すばらしい企画展でした。
3部構成になっていて、1部では「幕末・維新の先覚者、岸田吟香」として、ヘボンと一緒に編纂した和英・英和辞書や、自身が起業して大成功させた液体目薬の宣伝広告、彼が庇護した画家たちの作品などが展示されていて、歴史的にもとても興味深い内容です。
ちなみに私が訪れた時は辞書の「M」のページが開かれて展示されていましたが、「マメ=a young maid in a prostitute home」や、「マメダツ=to be truthful, sincere, faithful」など、むしろ日本語の意味が分からず、1886年に使っていた日本語を知るのも面白かったです。
2部は劉生の代表作である麗子像の油彩連作を始め、様々な作品が展示されています。
有名な麗子像。本物はやっぱりすごかったです。
ただただ絵に引き込まれ、しばし動けなくなりました。
木炭、チョークで描かれた彼の妻、蓁のスケッチ。
なんとも魅力的で美しく、心に深く迫るものがありました。
東洋の美に魅せられた劉生は、日本画も多く残しています。
こんなユーモアたっぷりの絵もあります。タイトルは「料理のない時をる化けもの」。
挿絵も多く手掛けています。こちらは武者小路実篤『かちかち山と花咲爺』の挿絵。
学芸員の方のコメントに「ウィリアム・ブレイクばりの世界を背景としつつ、興味深い独創性を見せている」とありますが、一連の作品はどれもかなり面白かったです。
3部は、演劇、絵画、小説などを通じ、表現者として生きた麗子像のモデル、岸田麗子の活動が紹介されています。
とてもすばらしい企画展なので、世田谷近くにお越しになる機会があったら足を運ばれてみてはいかがでしょう?