11月24日まで、上野の東京国立博物館にて「中国絵画の至宝展」が開催中です。

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今年にリニューアルされた東洋館のオープンを記念して開催された特別展で、中国国内で歴代の書画を最も多く保有する上海博物館より、約1000年にわたる中国の絵画を代表する名画40件を展示しています。中国絵画史において重要な流派と画家の名作をほぼ網羅し、初の海外出展や、中国国内でも滅多に展示されない作品も含まれているとのことです。

会場に入った時、偶然にも学芸員の方が作品の説明をされていたのですが、「上海博物館でも最高レベルの作品が一度に日本に来てしまったという、本当に、本当に、奇跡のようなすばらしい企画展なんです!」と、何度も繰り返されているのが印象的でした。

中国絵画というものは私にとってあまり馴染はなく、墨絵の山水画や、赤やピンクなど鮮やかな色を使った花鳥画などの漠然としたイメージしかありませんでしたが、実際に今回の展覧会で代表的な作品を見てみて、とにかくそのすばらしさに圧倒され、衝撃を受けました。

特に衝撃を受けたのが、明末に活躍したエキセントリックスクール(奇想派)の代表画家、呉彬(ゴヒン)の描いた「山陰道上図巻」(1608)です。

上海展1

繊細でもあり、力強くもあり、複雑で生きているような線で、見たこともないような形の山や岩が10メートルの巻物にびっしりと描かれています。

学芸員の方の説明によると、今回は、この作品を鑑賞するのに極めて良い条件が3つ揃っているとのことでした。

1つ目は、ケースの幅です。巻物を閲覧する場合、ケースの幅が足りずにその一部しか見ることができないことが多いですが、リニューアルした東洋館で使用している展示ケースは幅がとても長いので、今回は約10メートルの巻物をそのまま全部広げて見ることができます。

2つ目は、ケースには最高級のガラスを使用しているとのことで、自分の顔がほとんどガラスに反射して映ることがありません。

3つ目は、照明がすばらしいことです。

これほどの条件でこの名画を鑑賞できる機会は、世界中でも今後滅多にないだろうとのことでした。

この巻物は春夏秋冬の移り変わりを表現しているので、右から左にじっくり見ていくと、季節が徐々に変化していく様子がよく分かります。ガラスに顔を近づけて見ることができるので、中国絵画のあらゆる技法を駆使しているというそのバラエティーに富んだ細かい筆使いもじっくり鑑賞することができます。

上海博物館2

張渥の白描画、「九歌図巻」(1346年)もすばらしかったです。元代文人の描いた一流の白描画は日本にほとんど伝わっていないとのことですが、流れるような美しい線に、目が釘づけです。こちらの作品も呉彬の巻物に使用されているのと同形のケースに入っているので、間近でその芸術的な線をじっくり鑑賞することができます。

上海博物館3

その他にも心を奪われる作品がたくさんありました。

王淵「竹石集禽図軸」(1344年)
鳥の羽のふわふわっとした繊細な表現と、岩や草木の凛とした線の表現がすばらしいです。

上海博物館4

惲寿平「花卉図冊」(1685年)
工筆画の繊細な線や色づかいも美しいです。

上海博物館5


未だ興奮冷めやらず……。
とにかくすばらしい作品が集まっているので、中国絵画に興味のある方はぜひ足を運んでみて下さい。