橙月水墨画教室 Sumi-e class in Tokyo

西日暮里と世田谷用賀で水墨画教室開催中です。 渋谷の国際墨画会では、英語クラスを担当しています。 Sumi-e class in Nishinippori and Setagaya (Yoga) in Tokyo. International Sumi-e Association in Shibuya, English class lecturer.

上野の森美術館で、「石川九楊展」が7月5日から30日まで開催されました。

http://www.ueno-mori.org/exhibitions/article.cgi?id=214

九楊展1

前衛書家の先生にすすめられて、何の予備知識もなく行ったのですが、いわゆる普通の書道展と思っていたので、最初は「これが書?」と度胆を抜かれました。独特の世界に目が釘付けになり、展覧会を見終わる頃にはすっかり虜になってしまいました。

カラマーゾフの兄弟(部分)
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源氏物語書巻55帖より「朝顔」
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源氏物語書巻55帖より「野分」
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ご本人が作品制作をされている映像が会場で流れていましたが、実際に原典の本を見ながら細い筆で制作されていました。
文字が派生してこのような世界に広がっているのでしょうが、見る人によっては色々なものに見えます。
ミロやクレーに通ずるところがあったり、音を表現したカンディンスキーの絵画作品にも通ずるところがあったり。
私には音が聞こえてくるように感じましたが、一緒に鑑賞していた友人は、「三次元ではない、別次元の世界への入り口に見える」と話していました。

源氏物語書巻55帖より「若菜 上」
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西洋画好きの友人にすすめてみたところ、早速見に行ってよかった!と返事があり、友人は、ロスコーやカンディンスキー、クレーみたいと話していました。

ご本人がショップにいらっしゃって、図録に気軽に墨でサインをしてくれたのにも感激しました。ライヒやグラスのコンサートに行った時も思いましたが、素晴らしい作品と、その作品を生み出したご本人を同時に目の前にすることができるのは、本当にすごいことだなと思います。

この秋、行きたい展覧会が目白押しで時間を作るのも一苦労。満員電車や交通渋滞でうんざりすることも多いですが、色々な展覧会がそこかしこで開催される季節は、東京にいるメリットを特に享受できるひと時でもあります。

もう終わってしまいましたが、11月13日まで出光美術館で開催されていた「大仙厓展」は楽しみにしていた展覧会の一つでした。
2016仙厓

仙厓は「可愛い」禅画として最近とても人気がありますが、この筆のタッチや何気ない線がなんとも言えない温かみのある味を出していて、私ににとっては、究極的にはこういう絵が描けたらいいなと常に思っている大師匠。出光美術館は膨大な仙厓コレクションを所有しているので、度々仙厓展を開催しています。確か前回は2013年でしたが、今後も開催されると思うので、機会があればぜひ仙厓の素朴だけれども人の心を打つ書画をご覧になってみて下さい。

そして、そんな仙厓を師と仰いでいる、ベルギーの現代美術を代表する画家であるピエール・アレシンスキーの展覧会が、12月8日まで渋谷の文化村で開催されています。

http://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/16_alechinsky/

日本の書にも大きな影響を受けたと言われるアレシンスキーですが、会場には自らが1955年に制作した「日本の書」というドキュメンタリーフィルムが流れていました。篠田桃紅や森田子龍などの書家を映像の残したショートフィルムですが、フランス語のナレーションと、幻想的な現代音楽がバックに流れていて、今までとは全く違う視点から日本の書を眺めているような不思議な感覚になりました。

日本・ベルギー友好150周年を記念した日本初の回顧展ということで、広い会場はアレシンスキーの大作で埋め尽くされていてかなり見応えがあります。

アレシンスキー

文字や言葉にこだわりが強く、手紙や書類、地図、航海図など、文字のある反故紙を使ってたくさんの作品を制作しています。
アレシンスキー3

展覧会最後の部屋で流れていたアレシンスキーのインタビュー映像も、作品制作風景やアトリエの様子がわかってとても面白かったです。アレシンスキーは中国画宣氏や和紙なども使って作品を制作していますが、キャンバスの上に紙を裏打ちしているところが写されている場面があり、日本では通常水墨画や書道作品は通常表具屋さんにお任せしてしまうので、どうやるのかとても興味が湧きました。

アレシンスキーは89歳を迎える現在でも精力的に作品を発表し続けているとのことで、同じ時代に今も生きている偉大なアーティストの作品を見ることができ、感動もひとしおでした。

上野の東京都美術館にて9月22日まで開催されていた、「ポンピドゥー・センター傑作展」に行ってきました。
1977年、パリに開館したポンピドゥー・センターのコレクションより、1906年から1977年までの作品を1年ごと1作家1作品を紹介するという展示会で、フランス近現代美術の流れが一望できるという内容です。

コンセプトに合わせ、動線もとても工夫されていました。
時代の流れに沿って、会場を効率よく巡ることができます。

ポンピドゥー展1

各アーティストの名言が作品と共に添えられていたので、言葉と絵を一緒に見ることができるのも楽しかったです。
刺激になる言葉がたくさんありました。

コンスタンティン・ブランクーシ(1876-1957)
「呼吸するように創造することができたなら、それは真の幸福でしょう。そこに到達すべきなのです」
ポンピドゥー7

そういう境地にいつか到達してみたいものです。。。

書道や水墨画を始めるようになってから、黒が印象的な作品に特に目がいくようになりました。

ジョルジュ・マチューの1954年に制作された作品。
即興で絵の具を撒いて描かれたものです。前衛書の作品と並べて見比べてみたら面白そう。

ジョルジュ・マチューの言葉:
「芸術家は物を基盤としたこの世界の中で、人に基づく世界に再び終点をあてうる最後の者になるだろう」

ポンピドゥー2

こちらはロシアの画家、セルジュ・ポリアコフの1952年に制作された作品。
ロシア正教会の十字架をイメージしたものです。静粛な黒が美しいです。

セルジュ・ポリアコフの言葉:
「人はかたちを見るとき、それを聴かなければならない」

ポンピドゥー3

シモン・アンタイの1957年に制作された作品。
キャンバスに着色したものの上に黒を重ね、渇ききらないうちに黒を削り取って作られた作品。

ポンピドゥー4

オーギュスト・シャポーの1908年に制作された、ムーラン・ド・ラ・ギャレットを描いた作品。
(中でお酒を飲んでいる人たちに混ざりたい!)

オーギュスト・シャポーの言葉:
「芸術作品が成立する根底に欲求や喜びがあるなら、そこにはまた人々の生活との接触、つまり人間的な触れ合いがある」

ポンピドゥー6

私の勝手なイメージですが、墨が表現する黒は透明感や瑞々しさが引き立ち、油絵具などを使った洋の芸術が表現する黒はもっと硬質で光の粒子を含んでいるような感じ​がします。以前友人とペルトの音楽について話していた時、その友人が「闇の世界なんだけど、光り輝く闇」と表現していましたが、その表現がぴったりくるかもしれません。墨は水を使って書/描くものなので、湿度感を含むのは当然といえば当然なのですが、いつか光り輝く闇の世界を墨で表現してみたいなぁと憧れを抱いた展覧会でした。

旅の最終日は、清末の1904年に発足した、篆刻を中心とする学術結社「西泠印社」を訪れました。
2011年に世界遺産として登録された杭州郊外に位置する西湖の畔に印社本拠地があります。

西泠印社入口前の景色。
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今回の旅行を通じてずっとどんよりとしたお天気でしたが、黄山しかり、こちらの西湖も曇り空や時雨が似合う風景で、とても風情がありました。まさに水墨の世界です。この周辺のエリアは大変人気があって、不動産の価格がとても高いとのことでした。

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印社の入り口。
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内部の庭園。朝一番だったので、人影もまばらでとても静かでした。
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ここを訪れた最大の目的は、敷地内にある本店で印泥を購入することでした。まだ朝早くてお店が開いてなかったので、涼しくて気持ちのよい空気を吸いながら、庭をしばらく散策。
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9時半にオープンしたお店は日本語を話すスタッフがいて、ドルも円もOK。今回の旅行で思いましたが、そういう場所は大抵価格が観光客プライスな気がします。こちらも予想していたよりかなり高い値段で販売していて、1両が安いもので6000円、高いもので10000円しました(ちなみに、4個買うと5個目はタダ)。ただ、西泠印社というとブランドなので、本店に来た記念にと、参加者はほぼ全員が数個購入。午後のフライトに間に合うように上海に戻らなくてはならないので、あまり時間もない中、店員さんたちの売り込みも激しく、皆慌ただしく品定めをしていました。少し他の人たちより早く終わったので、バスに戻ろうとすると、入口近くの同じ敷地内のお店が少し遅れてオープンしたところだったので入ってみました。そこにも同じような印泥が売っていましたが、値段は半分!品質の良し悪しは不明ですが、同じ印社の庭にある、同じブランドの、同じサイズと色のもので、なんで値段が半額なのかは不明でした。。。(ちなみに、こちらにいた店員さんたちは日本語ができませんでした)。

幸い渋滞もなく、上海の空港には時刻通りに無事到着しました。
4泊5日の短い日程でしたが、文房四宝の故郷で、それぞれの製造過程を見学することができて、とてもよい経験ができました。
何事にも共通したことですが、やはり実際に目にしてみるのは大事だなと改めて思いました。

そしてガイドの羅さんのおかげで、食事も大満足!帰国後驚いたことは、あんなに朝昼晩食べ続け、移動は全てバスでほとんど歩かなかったのに、体重が増えていなかったことでした。中華料理、すごいです!

4日目は、歙県にて、中国三大硯の一つである歙硯の工房見学に伺いました。

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職人さんたちが、硯の石を加工しているところ。

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こちらは墨の工房も兼ねていて、同じ敷地内で墨も作っていました。

煤と膠と香料を混ぜたものを練り合わせ、墨を作っていきます。
工程は日本の墨の作り方もほぼ同じでですが、日本ではひたすら手や足で練るのに対し、中国は練り合わせたものをハンマーで叩くのが特徴です。また、煤と膠の配合も中国と日本では異なるので、発色やにじみ、硬さ、粘りなどに違いが出てきます。水質の違い(中国は硬水、日本は軟水)などもあり、中国の墨は固いのが特徴で、保管に気をつけていないと湿気の多い日本では割れやすいという弱点もありますが、深味のある美しい色を出すことができます。

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練ったものを型にはめているところ。
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乾燥させているところ。
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出来上がった墨に彩色をしているところ。
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午後は徽墨(安徽省産の墨。名墨として有名)の開発者である清時代の墨匠、胡開文の生地、績渓上荘村へ。
胡開文記念館を訪れました。

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記念館の外にあった趣のあるベンチでは、地元の方たちがのんびり井戸端会議をしていました。
川が流れる、のどかな風景が美しい村です。

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午後は同じ村の徽墨工房へ。
午前中に見学した工房よりも大分小さなローカル工房でしたが、こちらも職人さんたちが一から全部手作りしていました。家族経営されている工房で、ご両親と跡継ぎの息子さんが案内してくれました。(英語は全く通じなかったので、ガイドさんに通訳してくれました)。日本にも輸出しているという午前中の工房では松煙墨が一つ4000円くらいで販売されていましたが、こちらは同じサイズの桐箱入り松煙墨がたったの600円(!)で販売されていました。質にどの程度の差があるのかは使ってみないと分かりませんが、試しに両方購入してみたので、使ってみるのが楽しみです。

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見学後は、227キロの道のりをミニバスで約3時間半かけて杭州へ。
今までとはうってかわり、大都会に到着です。

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