橙月水墨画教室 Sumi-e class in Tokyo

西日暮里と世田谷用賀で水墨画教室開催中です。 渋谷の国際墨画会では、英語クラスを担当しています。 Sumi-e class in Nishinippori and Setagaya (Yoga) in Tokyo. International Sumi-e Association in Shibuya, English class lecturer.

5月前半、イギリスとイタリアに行ってきました。

今回の欧州訪問最大の目的は、イギリスに住む友人の結婚式に出席することでしたが、そこで初の書道パフォーマンスをする機会に恵まれました。

会場はイギリス北部のニューキャッスルにある1800年代に建てられたお屋敷です。

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当日のスケジュールは午前中に人前式、ドリンク、ランチを兼ねたレセプション、写真撮影、ランチ後のドリンク、夜のビュッフェ、ダンスと続き、おひらきは夜中の12時。書道パフォーマンスは夜に行われました。

式会場。
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レセプションの様子。
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ランチメインのラム肉。臭みがなくてとても美味しかったですが、すごいボリューム!
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友人の新婦は日本人で、新郎はイギリス人。列席者の8割はイギリス人で、残りは日本人やフランス人、アメリカ人、などなどでした。
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書道は見たことがないという人がほどんどだったので、まずは簡単なレクチャーから行いました。日本語の漢字、仮名、文字の歴史、現代日本の書道についてなど、作品例の写真などと共に、英語でざっくりと説明しました。

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今回は漢字ではなく、日本の伝統である古典仮名書道を紹介したかったので、お祝いの席にふさわしくて、日本人なら誰でも知っている和歌を題材に選びました。

我が君は 千世に八千世に さざれ石の 巌となりて 苔の生すまで ~読み人知らず~

(私の大切な君は、人の千倍も八千倍も永遠に生きて、小さな石が岩になってそこに苔が生えるまで、長寿でありますように/『古今和歌集』中島輝賢偏 角川文庫より)

ご存知、古今和歌集の「賀の歌」から、国歌の元になった歌です。国内では何かと物議を醸しますが、元々は、大切な人の健康と長寿を願う親愛の情を含んだ美しい歌です。

イギリス人の友人にチェックしてもらって、こんなかんじに英訳してみました。
May you live a long life, for thousands of years, until pebbles grow into mighty rocks lush with moss.

用意したのは、筆、紙、墨汁(万が一のため、水で洗って落ちるもの)、落款、印泥、下敷き、文鎮です。
席上揮毫は初めてだったのでかなり緊張しましたが、書道を見たことがない人たちがほとんどというのを救いに、なんとか最後まで書くことができました(^^;)

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書道の出来はともかく、多くの方に興味を持ってもらえたようでよかったです。パフォーマンス終了後、自分の名前やイギリスの諺を仮名で書いてほしいというリクエストや、書道に関する質問などをたくさん頂きました。列席者の方たちだけでなく、会場のスタッフである両腕に入墨が入ったバーテンのお兄さんたちからも、「腕に入墨を入れたいから名前を書いてほしい」とリクエストがありました😊

バーテンのお兄さん。
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結婚式場はこの後ダンスパーティー会場へと変身し、パーティーは夜中まで続きました。
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六本木のサントリー美術館にて、5月10日まで「若冲と蕪村展」が開催中です。

http://www.suntory.co.jp/sma/exhibit/2015_2/index.html

サントリー美術館は、六本木ミッドタウンガレリア3階に入っている、アクセス抜群の美術館です。
仕事が休みの平日朝一番を狙って行ったのですが、それでもかなりの人出で、今展覧会の人気の高さが伺えました。

若冲といえば、緻密な鶏の絵を思い浮かべる方も多いと思いますが、この展覧会ではかなり濃密でバラエティー豊富な若冲に出会うことができます。

技術力の高さは超人級!
筆と墨を自由自在に操る天才です。
若冲

こちらは、にじみを上手く利用した筋目描きという手法を駆使しています。写真だと分かりづらいかもしれませんが、筋目描きを用いて、龍のウロコの細かい部分を表現しています。
若冲1

そして若冲の魅力は、内側から迫ってくる圧倒的なパワーです。
若冲2

また、何より今回感じたのは、その技術力と精神的パワーに加え、抜群にユニークかつ洗練されたセンス!
どの絵もとってもお洒落です。

若冲4

若冲5

若冲6

そしてこんな可愛い絵も。
若冲7

同じ天才でも、緊張感がみなぎる若冲の絵とは対照的に、蕪村の絵はユーモラスで温もりのあるものが多いです。
蕪村の絵をみて「可愛いわね」と友人たちと盛り上がっていたり、思わず見る人が笑顔になっていたり。

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蕪村3

鑑賞する人をほっこり、にっこりさせる絵がたくさん。
蕪村

私が特にいいなと思ったのはこちらの絵。
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鳥と花と空と書。
空間が美しいです。

全く違う個性を持った二人の天才画家の作品をたっぷり堪能できるすばらしい展覧会です。
美術館の周りはお洒落なお店やレストランに囲まれていて、鑑賞ついでに色々楽しむこともできます。
ゴールデンウィーク中も開催しているので、ご興味ある方はぜひ。

世界を代表するテノール歌手、ヴィットーリオ・グリゴーロのコンサートに行ってきました。
前回のブログで書きましたが、METライブビューイングのホフマン物語であまりにも感激したので実際の声を聞いてみたくなり、会場に足を運びました。生の声は期待以上にすばらしく、その美声と迫力と感情の渦に圧倒され、鳥肌が立ちました。

grigolo

歌がすばらしかったのはもちろんなのですが、プラスですごかったのは、聴衆を楽しませようとするサービス精神。もうこれが半端ありませんでした。ステージ上で踊るわ、観客に花は投げるわ、ステージから下りて観客席で歌うわ、アンコールは「まだ歌ってくれるの!」というくらい何度も何度もステージに現れるわ、お客さんが「ヴィットーリオ、オーソレミオ歌って!」とリクエストしたらそれに応えて大熱唱してくれるわ、しまいには勢い余ってスライディングポーズでステージに現れ、文字通りステージ上を駆け回っていました。世界中の名だたるオペラハウスから引っ張りだこの超売れっ子一流歌手が、そこまでやってくれるのか!と、ただただ驚くばかり。

上のジャケット写真は紳士っぽいですが、実際はこんなヤンチャな雰囲気のが近い(youtubeのインタビュー動画より)↓

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翌日の日経新聞のインタビュー記事に、「オペラの聴衆の高齢化が進んでいる。カリスマ性のある若いメッセージを発していくべきだ。若年層とコミュニケーションをとるたえには何でもする。その上で、オペラの美しさ、過去の偉大な音楽作品のすばらしさを伝えたい」とありました。

観客を楽しませようとする精神や、若い世代にオペラのすばらしさを伝えたいという熱い思い--。天才歌手としての才能だけでなく、その情熱がすばらしいです。あのノリノリロック歌手ばりのステージは、観客を喜ばせようとするエンターテイナーという以上に、とても大切なことを教えてくれていると思いました。

東京バレエ団のジゼルを見に行ってきました。

主役のジゼルは、ウクライナ出身のボリショイバレエ団プリマバレリーナで、プーチン大統領のお気に入りとも言われている、スヴェトラーナ・ザハロワ。

http://www.svetlana-zakharova.com/
http://matome.naver.jp/odai/2140825528344563601

彼女の公演を見るのは初めてでしたが、これがもう息をのむほど美しく、役柄の精霊そのものでした。

ジゼル

ロマンティック・バレエを代表するジゼルですが、精霊の棲む夜の森を表現した薄暗いブルーの照明と、ジゼルの真っ白なドレスと、アダンの優雅な旋律とが織りなす風景に、ザハロワの霧のようにふわふわと漂う、重力を全く感じさせない踊りが加わり、この世のものとは思えない幻想的な世界を描いていました。

古典バレエの世界もやっぱりいいなぁと、公演後はしばらく夢心地でしたが、ふと思い出したのが、先月渋谷文化村で上映していたロンドンナショナルギャラリーのドキュメンタリー映画で、絵画の前でバレエを踊るシーン。

http://openers.jp/article/869562

少々話は飛びますが、先日友人が、絵画の前でペルトの合唱曲を演奏する展覧会の様子を紹介したリンクを送ってくれました。これがまたすばらしい!

ペルト+モダンアート+フォックスクラマンティス
https://www.youtube.com/watch?v=5MMamdLMtZo

こういった展覧会と、音楽や踊りなどを組み合わせて作り上げる空間ってすてきだなと最近よく思います。

私の絵の恩師である故坂下先生の個展でも、朗読とオペラのミニコンサートが企画されたのですが、独特の空気がかもしだされ、その場に居合わせたギャラリーの方たちと不思議な時間を共有できたのを記憶しています。

もし、古典仮名作品に音楽や踊りを合わせるとしたらどんなものが合うでしょう……?

レストランや、カフェ、バーなどの居心地のよいスペースで、特定のテーマを元に、書画と音楽や踊りのコラボレーション―そういったイベントを通じて、かなの世界を、若い世代の人たちや、海外の人たちなど、幅広い層に紹介していけたら面白そうです。

「日本民藝館」で、3月22日まで「文字の美」展が開催中です。

http://www.mingeikan.or.jp/

「日本民藝館」は、井の頭線の駒場東大前駅から徒歩数分の場所にあります。
駒場東大前は渋谷からわずか2駅。
駅前には言わずと知れた東大がありますが、周辺はのどかな雰囲気の落ち着いたエリアです。

日本民藝館。
民藝館1

ネット検索していて偶然みつけた特別展のタイトルに惹かれ、初訪問。
今までこんなすてきな場所があることを知りませんでした。

和風建築の外観はもちろん、内観もすばらしいです。
木の温もりを大切にした和風建築独特の居心地のよさもさることながら、さりげなく置いてある家具や小物、展示方法などなど、何から何までセンスがよく、洗練された空気が広がっています。

入口正面の壁には、大きな漢時代の拓本が飾ってあります。
博物館で展示物を鑑賞するというよりは、展示物を身近に感じながら、空間そのものを楽しめる作りになっています。
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古い学校の教室のような雰囲気の展示室。
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木枠のガラスケースや磨かれた木の床にほっとします。
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「日本民藝館」は、「美の生活化」を目指す民藝運動の本拠地として、思想家の柳宗悦(1889-1961)により設立されました。

あまりにもすてきな場所だったので、もっと柳宗悦のことを知りたくなり、売店で売っていた『柳宗悦』(中見真理著/2013年岩波新書)を買ってみました。彼の活動を、多民族・多文化が共生する「複合の美の思想」という興味深い切り口で、わかりやすく書かれている本で、夢中で読破。途中、そうそう!と共感する部分が多く、自分が大切にしたいと思う芸術の方向性を考える上でとてもよい刺激を受けることができました。

宗悦の言葉より。美しい表現です。
「野に咲く多くの異なる花は野の美を傷めるであろうか。互いは互いを助けて世界を単調から複合の美に彩るのである」

「新奇なものを作ろうとするたくらみや、自分の名前を売り出そうとする作為から離れ、ひたすら実用に即したものを作ろうとするとき、材料がもっともよく活かされ、労働と美が結合し、優れた美が生まれる。そこには華美も他への威嚇もみられず、素直で親しみがもてる静寂な美が保たれている」


今回の特別展「文字の美」には、「既成の価値観、書道の習慣などに縛られず、柳宗悦自身が美しいと感じた文字を民藝館のために蒐集したもの」が展示されていて、通常の書道展などとは全く趣旨が異なり、とても感銘を受けました。

現在開催中の特別展「文字の美」の展示室。
民藝館5

文字がデザインされた日本の羽織や陣笠、皿、版木、和時計、花瓶などの他に、中国の拓本、韓国の文字絵、グレゴリオ聖歌の楽譜、イギリスの陶器などが展示されていました。コレクションのセンスも抜群です。

神秘思想を中心とした宗教研究、ウィリアム・ブレイクの先駆的研究、木喰仏の発見とその研究、沖縄方言論争、仏教美学樹立への挑戦等々…宗悦の多様な経歴を聞いて、コレクションの幅の広さと一貫性に納得。本当にわくわくします。

「水の字に魚」自在横木(囲炉裏で梁から吊るす自在鈎の部分) 飛騨地方 江戸時代
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版木 江戸時代
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中でも私が気に入ったのは、かなで書かれた般若心経。
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おそらく平仮名しか知らない信者が、江戸期か明治以降あたりに書いたものと説明にはありました。
有名な書家や僧が書いたものではありませんが、強く心を打たれる書で、しばし見入ってしまいました。

こちらも無名の人が書いた室町時代の手紙。
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高名な書き手の作品ではなくとも、どこか惹きつけられる温かさや味があります。
展覧会のためではなく、心の中から湧き出た感情や思いを自然と表現できる書が自分でも書けたらなぁと思います。

廊下のスペースもすてきです。
このベンチに座って、陽だまりの中、ずっと前の壁に飾ってある拓本を眺めている人がいました。
民藝館10

日本民藝館で貴重な時間を過ごした後、近所を散策に行きました。

近くには駒場公園があり、ここには旧前田侯爵邸があります。
駒場公園1

和館は工事中ですが、洋館は無料で入ることができ、カフェもあります。
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中はかなり広いスペースで、レセプションにぴったりです。
プロのケータリングやイベント会社と協働して企業や結婚式のレセプションに貸し出したらさぞかし人気が出るのではないでしょうか。

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重要文化財なので色々と規制があって難しいのかもしれませんが、例えばロンドンではカンパニーリバリーホールという同業組合の所有する歴史ある建物が多数残っていて、そこでは結婚式や会社のイベントなどが開催できるようになっています。歴史的建造物が地元住民の生活にとても身近なものとして活用されています。

http://www.liverycompanies.info/a-z-list-of-companies/livery-halls.html

私が以前勤めていた会社では、下記リンクの Merchant Taylors'で新しいトップの就任レセプションを開催したことがあります。ホールにはイベントを担当している部署があって、プロのケータリング会社や、契約しているフラワーアレンジメントのアーティストやフォトグラファー、ミュージシャンなどと一緒に相談をしながら、イベントを作っていくシステムができています。
http://www.mtaylorsevents.co.uk/the-rooms/the-great-hall

美術館や博物館もしかり。テートモダンのピカソやマティスの絵の前や、大英博物館の古代の遺物の前で、ワインを飲んだり、カナッペとシャンパンで談笑できるというすてきな機会を持つことも可能です。日本でも、公共のすばらしい施設がもっと住民の身近なものになったらいいのにとよく思います。

そして、もう一つ、侯爵邸で残念なのは、トイレにあった特大消臭力と、けばけばしい色のいわゆる懐かしの便所スリッパ。。。さりげないインテリアをトータルコーディネートしたらもっとすてきになるのに惜しいです。

侯爵邸の近くには、日本近代文学館もあります。

http://www.bungakukan.or.jp/

こちらでは現在、「近代文学の名作・大正」という展示会をやっています。
作家の手書きの原稿や、当時の本などが展示してあります。

デザインがとってもお洒落。
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若かりしころの谷崎潤一郎。けっこうイケメン。
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こちらにも面白いカフェがあります。コーヒーの名前には鴎外や、芥川など、作家の名前がついていて、壁一面に本がずらり。日本文学好きにはたまらないスペースです。
http://tabelog.com/tokyo/A1318/A131801/13146659/

駒場東大前散策、なかなか密度の濃い時間が過ごせて、個人的にはかなりおすすめです。

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