今年の10月に銀座セントラルミュージアムで開催された「書道芸術院秋季展」より、千葉蒼玄先生の作品「Labyrinth」。

100人が観たら、100通りの感じ方があると思いますが、何に見えますか?

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私には、塊をカポッと二つに割って開いた断面図みたいに見えました。
塊は、ある宇宙や異次元世界が凝縮されたもので、右のごつごつとした模様はその世界を覆っている外側の殻、左は宇宙の中身で古代人が踊ってるみたいなかんじです。

現代書はあまり馴染みのない方も多いと思いますが、既成概念にとらわれない様々な表現があるので、書道に詳しくない人でもアートを鑑賞する感覚で、作品を直に感じることができます。

11月18日から1月6日まで、上野の東京都美術館で、「上野アーティストプロジェクト2018~見る、知る、感じる、現代の書」展が開催されるので、現代書を鑑賞してみたい方にはぜひおすすめです。

「見る、知る、感じる、現代の書」展

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上述の千葉蒼玄先生も出品されます。
震災後の2013年に発表された作品「鎮魂と復活」のバージョンアップバージョンが展示予定とのことです。「鎮魂と復活」は、津波を表現した壮大な作品です。震災に関する新聞の記事から拾った文字で壁面が埋め尽くされています。

2013年 鎮魂と復活

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言語脳科学者の酒井邦嘉数氏が、2013年に「鎮魂と復活」を鑑賞した時のコメントを寄せているので、抜粋します。(『芸術を創る脳』東京大学出版会発行より)

「千葉さんは石巻市在住で、2011年の東日本大震災による津波で被災されました。作品を近くで見ると、震災に関する当時の新聞記事が、右から左へ、左から右へと、すべて墨で書き取られていて、全景が大きな波のようになっているのです。壮大なモニュメント(記念碑)です。

私はこの作品を前にして、自然と涙が溢れてきました。そこには、痛ましい震災の記事に目を背けることなく向き合い、人々に鎮魂の祈りを捧げ、そして創作に徹することで自らを奮い立たせようとする作者の姿が、はっきりと目に浮かんだからです~省略~こうした素晴らしい作品を「前衛」という枠で語ろうとすることに、私は疑問を感じました。現代の書は、文字性を失った絵画に近づいているということがよく非難されます。そして、書は芸術であるが美術ではないといった明治時代からの論争も根強くあります。なぜ、芸術を愛する人々が共通項で語ろうとしないのでしょうか」

今年の公募展に出品した和製ノアの方舟。動物は上野動物園にスケッチに行ったり、衣装はお祭りに参加している人たちの衣装を参考にしたり、なるべく自分の目で見たものを取り入れるようにしましたが、波の線や、家具や船の装飾などの紋様は、色々な資料を参考にしました。

2018国際墨画会公募展

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調べものをするにもけっこう時間がかかりますが、そんな時、デジタルアーカイブがとっても役に立ちます。海外の美術館や博物館のサイトはとても充実していて、ものすごく勉強になるし、なにより見てるだけで楽しいです。

こちらは、スミソニアン協会のデジタルアーカイブに保存されている、森雄山1903年発行の「波紋集」。

波紋集

上、中、下とすべて保存されていて、見ごたえたっぷりです。
波が実に多彩な線で表現されていて、モダンでお洒落!
これを見つけたのは、すでに作品を描いた後だったので、描く前に出会えていたら、また違う波になっていたかもしれません。

こちらは波紋集を紹介していたサイト。英語とスペイン語のみですが、写真を見ているだけでも楽しいです。

my modern met

こちらは大英博物館の「コレクションオンライン」。

大英博物館オンラインコレクション

国立国会図書館の「デジタルコレクション」。
「仮名名蹟全集」が保存されているので、これは本を買わずに、プリントアウトして練習に使えますね!(^^)!

国立国会図書館デジタルコレクション

種を1つ2つまいて、必ず実がなるわけじゃない
実がなったからといって、甘い実がなるかどうかは分かんない
そこまでいくためには、ひじょうにたくさんの無駄がある
基礎研究というのはね、無駄なんですよ
だけども、無駄の中から大きなものが出てくる


ご自身の研究について昨年のテレビ取材でお話されていた、ノーベル医学・生理学賞を受賞した本庶さんの言葉です。受賞後の記者会見でも、心に響く言葉がたくさんありましたが、私には特にこの言葉が印象的でした。

これって、どの分野にも言えることだなと思います。
もちろんアートの世界にも。

何枚も練習で紙を費やして、作品づくりでは駄作や失敗作が山のように生まれて。。。
実に無駄ばかり。
とほほな毎日ですが、それでも、その中からいいもが出てくると信じたいし、いいものが出てくるためには、きっとたくさんの無駄を費やさないとだめですね。












12月13日~20日にかけて東京都美術館で開催される清和書展では、特別企画として植村和堂がコレクションしていた硯の展示が行われます。それに先駆け、清和書道会の機関誌で紹介された、植村会長による硯に関するエッセイを紹介させて頂きます。

ここで紹介されている硯も展示予定なので、ご興味ある方は展覧会にぜひお越し下さい。

「硯の変わり種」 (植村斉記 書つれづれより)

 
文房四宝と呼ばれる筆・墨・硯・紙のうち、硯は耐久消費財なので、実用上の目的のほかに、収集・ 愛玩の対象となっています。

 

仲間内で自慢の硯を持ち寄って鑑賞する洗硯会という催しがあります。水を張った盥の底に硯を沈めて、周りを取り囲んで鑑賞するのでその名があるようですが、水を通して眺めたほうが、石紋や石色が鮮やかに浮かび上がるのでしょうか。もっとも、ある中国の文人が日本を訪れたとき、人々が盥を囲んで集まっているので、金魚でも鑑賞しているのかと近寄ってみたところ、硯を水に沈めて眺めているので、日本人は奇妙なことをするものだと感心した、という話を聞いたことがあるので、中国にはない日本独特の風習なのでしょうか。


和堂先生も、著書『筆墨硯紙』の中で硯の鑑賞法として、「石色・石質を見て、硯式・彫琢を見て、手に取って撫でさすり、爪で弾いて声を聴く」と書いていますが、水に沈めて眺めるとは言っていません。


中国の屯溪に行った時、「老街」という商店街の通りをぶらぶら歩いていたら、大きな文具店の店先に水を張った水槽が置いてあり、中に歙州硯の原石が幾つも沈めてありました。縞模様が綺麗だったし、文鎮としても使えそうなので一個買いました。従って水槽に硯石を沈めるという習慣は中国にもあるようです。石に傷をつけないための配慮なのでしょうか。

図1)老街

 

和堂先生の収集品の中から、主として愛玩用の変わった硯を幾つかご紹介します。

 

玉硯
白玉を硯の形に成型したもの。表面は平滑で鋒鋩がないので、墨を磨っても殆んど磨れませんが、見た目は美しく手触りも滑らかで、鑑賞用には最適です。

図2)白玉硯
 

扁舟硯
小舟の形をした自然石。硯面は凸凹があって硯としては使えそうもありません。形が硯に似ていて面白いので、和堂先生が何処かから拾ってきて愛蔵品に加えたのでしょうか。

図3)扁舟硯

墨硯
清代の有名な女流作硯家=顧二娘=が制作した「杞栁硯」を墨で模したもの。墨は成型性が良いので自在な造形が可能です。

図4)杞栁硯

 

木化石硯

紫檀木の化石を硯に仕立てたもので、原産地はタイ国です。鋒鋩はあるので墨は摺れそうですがまだ試していません。

図6)木化石硯

 

菊花石硯

菊花石とは、玄武岩の中に石英が花模様のように入り込んだ観賞石です。これを硯に仕立てたのが菊花石硯で、実用というよりやはり観賞用の硯でしょう。

図7)菊化石硯

 

木硯
木製の硯。硯面には砂を撒いて漆で固めてあります。大層軽いので、旅行などの携帯用として便利です。鋒鋩がすぐになくなるので、メンテナンスには手間がかかりそうです。

 
図8)木硯

瓦当硯
瓦当の裏を研磨して硯の形に成型したもの。使った形跡がありますが、硬度が低そうなので、使い続けるとどんどん磨耗して凹んでしまいそうで心配です。

図9)瓦当硯表 図10)瓦当硯裏

陶硯
陶器製と磁器製がありますが、どちらも陶硯と呼ばれています。石の硯を使うようになったのは、中国では六朝時代以降、我国では平安時代になってからで、それまでは陶器や瓦の硯が専ら使われていて、膠で固めた固形墨を磨るのではなく、上で墨丸を磨り潰したり、墨の粉末を溶いて墨汁を作るのに使いました。


図11)陶硯 図12)陶硯

泥硯
唐硯の四大銘硯というと、端渓硯、歙州硯、澄泥硯、魯硯ということになっています。澄泥硯は嘗て泥を焼き固めて成型した硯だと思われていたのですが、現在では蘇州の霊巌山から採れる自然石を加工したものと判明しています。しかし、自然石の澄泥硯とは別に泥を焼き固めて造る泥硯も存在しました。写真の泥硯の裏面の銘文には「・・・・関底析出験之固是澄泥故知為宋朝物也」とあります。

図13)泥硯

この泥を焼き固めて硯を作る技術は長らく失われていたようですが、最近復活したと見えて「唐・宋時代の澄泥硯を現代に再現する」として、『汾河澄泥硯』と称する泥硯のカタログが送られてきました。

図14)澄泥硯カタログ

第70回記念清和展が、下記の通り開催されます。
お近くにお立ち寄りの方はぜひお越し下さい。

会場:東京都美術館1階 第3展示室

   JR上野駅下車 徒歩10分

 

会期:平成29年12月13日(木)~12月20日(木)

   午前9時30分~17時30分

   (最終日は15時まで) 入場は閉場の30分前まで

   休館日 12月17日(月)

   

特別企画:東京都美術館展示場内(全て無料)

(1)和堂コレクション展示:和硯

(2)講演会:講堂 12月15日(土)15時~16時 / 講師 青栁貴史氏(製硯氏)
(3)  学生席上揮毫:講堂 12月15日(土) 14時~15時

(4)ワークショップ:12月15日(土)~16(日)10時~16時30分

    子供たちに毛筆で年賀状や好きな字や言葉を書いて貰います。
         インストラクターが指導します。どなたでも参加可能。時間内に会場にお越しください。


授賞式・祝賀会  
日時 平成31年1月19日(土)12時~14時

会場 東天紅上野店

 

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